アビリク
やけに静かだ。

辺りを見回し、俺と美紅は言葉を失った。

道路では信号が青にもかかわらず車が停止し、空では小鳥が宙に浮いたままびくともしない。

時が…止まっている。

動けるのは俺と美紅、そして

「あらら。僕ら以外に人間の女1人巻き込んじゃったか…。」

この、目の前にいるスーツ姿の若い紳士だけだ。

まるで自分と俺が人間じゃないような言い方をしやがる…。

「か、海斗…。」

「……。」

俺は美紅を自分の背中に隠し、身構えた。

相手は時を操るアビリク。

さあ、どうする?
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