銀のしっぽ
ここで簡単に紹介しよう。
銀…彼は長年生きている狼である。
長い間生きてきたせいか人間の姿になる事ができる。
何故そんな芸当が出来るのか…それは銀、本人も知る所では無いのである。
気付けば出来た。
環境によって生き物は進化する。
人間で溢れかえっている現代…狼が狼のままで生活するのは難しい。
そんな環境になったから「ひとがた」になれるように進化したのではないかと銀は考える。
名前の由来は見た目そのまま。
銀色の毛並みの持ち主だからである。
人間が嫌いだが今の時代働かなくては食っていけない。
よってこうして人間の世界に出てこなくてはいけないのである。

車にはね飛ばされた彼…。
彼は急いでいた。
茜に会うために。

ここでまた紹介。
茜…彼女も長年生きている狼である。
勿論彼女も人間になれる。
彼女は人間が好き…というか人間の文化に興味がある。
と言えば聞こえはいいが実際の所、俗に言うヲタクなのである。
さらに質が悪い事に「腐女子」である。
しかも男女問わず小さい仔が大好きなのである。
妄想のおかずとして。
彼女は出版社で働いている。
彼女にぴったりな仕事だ。
そして銀の秘書、兼、担当なのである。

銀はなんと作家である。
歴史物を書いている。
読者からはリアリティーがあると評判であるが見て来たことを書いているだけである。
人間嫌いな彼には滅多に人間に会わずに済む仕事である。
勿論茜が仲介役をやってくれるから出来る事である。

ちなみに茜に会うために急いでいた銀だがこの2人には艶っぽい話は一切ない。
よくある打ち合わせってやつだ。
同じくらい生きているのでいい相談役でもある。
そして人間世界で生きているだけあって茜は時間にうるさい。
嗚呼…また後でいろいろ言われるんだ…と思いつつ野次馬達からよろよろと離れていく銀。
もう人間の姿を保つのが難しい…。
とにかく人間の居ない所へ…。
少し離れた所で限界がやってきた。
周りを確認。
人間は誰一人として居ない。
用心のために草むらに隠れ狼の姿へ。

「あー!おっきなわんわん!!」

ビクリ。
体が跳ね上がるのが自分でもよく解った。
これが雅との出会いだ。
< 2 / 3 >

この作品をシェア

pagetop