パンデミック
―大阪中央病院―

「大倉先生!大倉先生!しっかりしてください!!」

兄貴はベッドで寝る大倉先生に必死に話しかけている。

「ったくざまぁねぇな…井上…。オレは大丈夫だ。他の患者の手当てに行け。」

「………」

「井上先生!また新しい患者が!!」

「…はい。わかりました。」

―――――

「拓海…、もうこれから極力外に出ちゃだめよ…」

「はぁ?どぉいうことやオカン!?」

「今テレビでやってるけど新型インフルエンザが日本でも起こってる。うつったら治らないのよ!?」

「でも今のとこ感染者は12人しかいないんじゃ…」

「さっき海から電話があった…。“テレビで言ってる人数を当てにしたらアカン。常に患者は増え続けてる”って…」

「そんな…」

<…えー大阪での新型インフルエンザ感染者は43名に上り、他青森で12名、新潟で6名…>

「そんな…」

(PLLLLLL…)

オレの携帯に電話が鳴り響いた。

{-草野真理(くさの まり)-}

(……真理からか…?)

「もしもし…?」

オレは部屋に戻り電話にでた。

(あっ拓海ー?今度さぁ遊びに行かへん?ウチこっち戻ってきてから友達いないからクリスマス暇なんよ!)

オレの頭にオカンの言葉がよぎった。

「うーん…。…まぁいいや!わかった、空けとくわ!お前その前にインフルエンザかかんなよ!!」

(かかるわけないやん!!そっちこそ気をつけや!!んじゃね!!楽しみにしてるから!!)

「あっ、お前マスクちゃんと…」

(ガチャッ…プー…プー…)

「切られた…、まぁいいや。学校の宿題でもやろ!」
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