パンデミック
「はぁ…拓海どうしたん急に!?」

真理はマスクを取って息を落ち着かせている。

オレもマスクを取った。

「…あんだけの人数がおったら感染するかもしれへん…。…映画に変えよう。」

「………、仕方ないね。映画行こか。」

真理は少し残念そうな顔をした。

知らないうちに繋いでいた手は離れていた。

(…プシュ…)

「真理…、マスクしとけよ。」

「…うん。」

電車に乗ってもオレ達はまともな会話もしなかった。



“LAVE CALL”



これが今流行ってる映画のタイトルだ。


カップルで見に行くような恋愛洋画。

とりあえず見てまたものはいいものの、内容がオレの頭の中に全く入ってこず、挙げ句の果てにオレは寝てしまった。


(…ユサユサ…)

「拓海、映画終わったよ。」

真理はオレの体を揺らして起こした。

「悪い、寝てた。」

「見たらわかるわ!」

真理は軽く頭を叩いた。

「…って…」


頭をさすりながら真理を見ると頬が緩くなっていた。

「アハハハハ…!!」

緊張の糸が切れたようにオレ達は誰もいなくなった映画館で笑う。


(…よかった。)
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