パンデミック
「お父さん死んじゃ嫌!!」

大倉先生の娘さんはまだ小学校2年生ほどの小さな女の子だ。

奥さんも30歳ぼどの綺麗な人だ。


「…愛香…ごめんな…、今日クリスマスだからプレゼント渡したかったけど…」


「お父さん!がんばって!プレゼントなんて…」


「…はぁ…はあ…。…何が欲しかった…?」


「…えっ?」


先生の目から血が流れ、口からも少し吐血している。

「プレゼント…何が欲しかった?」

「…リカちゃん人形…」

「…お父さん…絶対元気になって買ってやるからな…」

「血圧、脈拍数共に低下していきます!!」

山口先生が叫んだ。


奥さんはもう泣き崩れている。

「愛香…“パパ”って呼んでくれ…。昔“パパ”って呼んでたのに無理やり“お父さん”って呼ぶようにしちゃったからな…」

「ぱ……パパ…?お願いだから死なないで!!」

「…当たり前…絶対プレゼント……」




(ピーーーーー)





………――


時が一瞬止まった。


「心拍数ゼロ、脈拍…」


「わかってるよ!!」


(ドッドッドッ…)


兄貴はすぐに心臓マッサージを始めた。

「大倉先生!!死んじゃだめっすよ!!」


(ドッドッドッ…)


「娘さんにプレゼント渡すんでしょ!?だから…」


(ドッドッドッ…)


「…だからこんなとこで寝てる場合じゃないでしょうが先生ぇえぇえぇ!!!!」





12月24日
13時24分
井上海と共に大阪中央病院の偉大な医師が院内感染により死亡した。
< 25 / 38 >

この作品をシェア

pagetop