パンデミック
「なぁ拓海…?」


横に座っていた修也がひそっと話しかけてきた。

「ん?どうしたん?」

「お前も泣いてないところみるとやっぱ実感湧かんよな…」

「……あぁ。ついこないだまで元気だったやつがな…」

オレは池垣の顔写真とその前で話す母親に目をやった。

「美園は誰にでも優しく、クラスでもまとめ役だったと聞きます。」

母親はハンカチを持ち、涙をこらえきれず泣きながら話している。

確かに池垣はクラスの中でも目立つ方にいた。

「どこの子供が自分の親より早くに逝くのよ!!」


(…!!!)


母親の言葉に胸が締め付けられそうになった。


その熱弁の後、焼香を済ませた。

「…クラスメートの方はぜひ…美園の顔を…見てあげてください…」


(……。)

「修也…行こう…。」


オレ達は棺桶の前の列に並んで進んでいく。



(……!!!)

「…うっ…池…垣…」

棺桶の中に治められた亡骸を見ると言葉が詰まり、修也と共に涙がこみ上げてきた。


「うゎ…ぁあぁ…」


今までの池垣との思い出が走馬灯のように甦った。

「池垣…池垣…い…」


唇が震えて声が出ない。

池垣の亡骸は痩せこけていて、目元に血をふき取った跡が微かに残っていた。


オレと修也は1つ祈りをし、式を終えた。
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