パンデミック
(ガタンッ…)


オレと修也は帰りの電車で揺られる。


「…拓海…、…大丈夫か?」

吊革を持つ修也が顔をのぞき込んできた。

「…池垣のやつ苦しかったんだろな…」


オレはつぶやいた。

「……あぁ。なんであいつが死ななアカンねんやろ…。もう葬儀はコリゴリや…。」

(…!!?)


「…修也お前…?」

「こないだも葬儀で呼び出されてな…。叔父さんが死んじゃったんや…。」

(…!!)

「これ以上感染者が増えなきゃいいけどな…」

「……うん。」


電車の中の広告やチラシには病院の宣伝や、新型インフルエンザの告知などに変わっていた。


電車に乗る人も以前に比べて激減した。


ほとんどの会社は休み、コンビニとスーパー以外開いていない状況が普通になった。

そして電車に乗っているオレたちは

この時2人ともマスクもゴーグルも付けてなかった。


(ガチャ…)

「…ただいまー。」

家に帰り、洗面台に向かう。

(ジョー…)

手を洗い終え、パッと鏡を見て気づいた。

「…やばい…、感染者してるかも…」


今日、葬儀以外マスクもゴーグルもしていなかったことに気づいたのだ。
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