パンデミック
その日の放課後、顧問が風邪で休みということで部活はオフになった。


ということでオレは梅田にある大阪中央病院に行くことにした。


(ウィーン)

―受付―

「どちらのご用件で…」

自動ドアを抜け、受付に足を踏み入れた。

「用件じゃないんですがあのー…」

「なんだ拓海やないか!!どしたこんなとこで?」

白衣を着た若い医師が近づいてくる。

胸には“井上”の名札、これが…

「兄貴!!」

オレの兄。

井上海(いのうえ うみ)だ。

大阪でも大きい総合病院で働いている。

「なんしに来たんや?風邪か?」

兄貴はどうやら休み時間のようだ。

「風邪じゃないわ!!ったく最近帰ってこぉへんからオカンが心配しとんねん!!」

「あっ、悪い悪い!!まぁ正月には帰るから!!」

「…まぁいいや。あっ、兄貴、今、時間ある?」

(……??)

「あぁ、大丈夫やけど…」

オレと兄貴は食堂に向かった。

餡蜜とプリンを注文して席についた。

「今日学校で友達が新型インフルエンザって言われてイジメられてたんだ…」

「……、そうか…。そりゃひどいな…」

「だろ?本人は全然違うんやで?」

「………。」

兄貴はなぜか無口になっている。

「テレビであんなことを放送するから…」

(…ブゥーン…ブゥーン…)

兄貴の白衣からバイブ音がなった。

「拓海悪い…、ハイ?」

兄貴は電話にでた。

「えっマジッすか?今すぐ向かいます。」

「おいもう仕事?」

「悪いなせっかく来てくれたのに…。まぁ正月には帰るから。後それと…」

「ん?」

「これから学校行くときはマスクして登校しろ。学校でも外すんじゃないぞ!」

それを言って兄貴は走っていった。
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