パンデミック
―207号室―

「あっ、井上先生!」

若い女の女医と中年の医者がマスクとゴーグルをつけていた。

「大倉先生、207号室の和田さんが新型インフルエンザを発症したって本当ですか!?」

「井上ぇ!!ゴーグルとマスクしろぉ!!感染するぞ!!」

兄貴は大倉先生の言葉に慌ててマスクとゴーグルわした。

「ゲホッゲホッ…」

患者は呼吸器をつけたまま苦しそうにむせている。

「肺炎と高熱…、それに鼻血…、全部新型インフルエンザに当てはまる…。まだ確定したわけじゃないが…」

「ゲホッゲホッ…ゼーハー…ゼーハーッ…」

患者は突然さらに苦しみだし自ら呼吸器を外そうとする。

「和田さん落ち着いてくださいねー、」

若い女医さんは体を押さえつけ呼吸器を外さないようにしている。

(バタバタ…)

それでも患者は尚暴れている。

「和田さん!!落ち着いてください!!」

(バッ…)

「ウォエッ」

患者は呼吸器をついに外して口から大量の血を吐いた。

「ハッハッハッハッ…」

患者の体は激しく震えだしもがきだした。

「大倉先生!やばいっすよ!!」

「ハッハッハッ…」

(ピーーーー…)

「脈拍、心拍数共にゼロです!!」

「井上そこどくんだ!!」

(ドッドッドッ…)

大倉先生は心臓マッサージを始めた。

「山口、井上、何やってんだ!早く電気ショック持って来い!!」

「はっ、はい!!」

山口とは女医の名前のようだ。

「先生!」

山口女医は大倉先生に電気ショックを渡した。

「下がって…」

(ドクン…!!)

(…ピーーーー…)

「…だめか!!?」

(ドッドッドッ…)

心臓マッサージを始め、また電気ショックを構えた。

「下がって…!」

(ドクン…!!)

(…ピーーーー…)

「はぁダメだ…、チクショウ!!」



―2012年12月20日、大阪で初めての新型インフルエンザ感染者死亡―
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