チャンドラの杯
『こんなに人を斬ったのは久しぶりだねえ』
 赤い地面の上で影法師がくつくつと笑った。

 体に戻った私は、動く者がいなくなった村を見渡していた。
 目を見開いたまま二つに割られた村長の顔がこちらを見ている。

『私も、君も』
「いいえ、人なんか斬ってませんよ」
『んんん?』

「ここに住んでいたのは、人じゃありませんでしたから」

 黒い双眸から零れた涙が私の頬を伝った。
「私と同じで」

 影法師は少し沈黙してから口を開いた。
『人だからこそ、彼らは生きるために必死だったのじゃないかな』

「・・・・・・私だって」
 私は唇を噛んだ。意識しなかったけれど、声が大きくなっていた。
「私だって、生きるのに必死だったんです!」
『うん。だから、君と同じで・・・・・・だよね』
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