チャンドラの杯
 僕は、僕やココと怪物の上にいる見知らぬ二人の姿とを見比べる。明かな違いがありありと現れている。

「きみたちはとても健康そうに見えるもの。病気を移してはいけないから」
 僕の袖を掴むココの手を、硬く握り返した。
「だから約束してくれる?」

 見知らぬ男の子は僕を見て、ココを見た。それからずっと黙ったままのロエンにも視線を向けた。

「わかったよ」と、男の子は優しい声で頷いた。
「触らなければいいんだね」

 良かった。僕はホッとする。
「僕はシオン、彼女はココ。それから彼はロエン」

 男の子が怪物の上から降りた。
 彼は「よろしくシオン」と革のグローブを填めた手を僕に差し出して、それから気がついて気まずそうに手を引っ込めた。
「俺はシドだよ。この子は」と怪物の上に乗ったままの女の子を振り返って。

「彼女はソーマ」

 ロエンが大きく息を吸った。「ソーマ」と小さく繰り返して、女の子を凝視した。

 このときになって僕は初めて、ロエンが未だにガンナイフの構えを解いていないことに気がつく。彼はいつでも斬りつけられるよう柄を握り締めて、鋭い目で怪物の上の二人を睨みつけていた。

 まるでヤッカと対峙した時のように。
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