チャンドラの杯
「素敵な魔法を使ってくれたお礼に、妖精を見せてあげるよ」
 ココが言うと、途端にソーマは瞳を輝かせた。

 ソーマの肌の色は僕たちと違って黒い。僕たちも陽に焼ければ黒くはなるけれど、もっとずっと。
 初めて見る肌の色だった。彼女の顔はまるで黒炭のように艶やかに黒く光っていて、輝く大きな二つの瞳をより大きく魅力的に見せていた。

「妖精? ここには妖精がいるの?」
 ソーマが楽しそうに笑うと、黒い顔の上で真っ白な歯が際立った。
「きみたちは妖精を見たことがないの?」と僕は聞いた。
 シドは肩をすくめた。
 ソーマとは逆に、シドの肌は僕たちよりもずっと白い。
 ロエンの白い肌に似ている。でもロエンとは違ってシドの髪は金色だった。夕暮れの海に沈む太陽のような、波打つ金の髪。ロエンの黒い髪も好きだけれどシドの髪の色も素敵だと思った。

 シドたちを案内した後すぐ、ロエンはどこかへ行ってしまった。マザーのところだろうか。
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