チャンドラの杯
「素敵な服だね。繻子の織物?」
 黒と金と紺とで織られた私の服を見て、女の子は黒い瞳を輝かせた。

「ええ、有り難う。高い山の麓で昔栄えた国の、民族衣装だそうです」
「腰の刀も素敵な細工」
「丸い屋根の塔があった国の細工です。刀身はまた別の国で作られたものですけれど」

 女の子は白い貫頭衣を着て、頭に白い大輪の花をさしている。
「私の名前はユイファっていうの。お姉さんは?」
「叶月といいます」
 キョウゲツ。ユイファは発音し辛そうに私の名前を口にした。
「どんな意味?」

「願いを叶えてくれるお月様」

 わあ。ユイファは漆黒の瞳を輝かせた。
「素敵なお名前」
 白い花飾りを揺らして、ユイファはひらひらと笑いを零した。それから「ついてきて叶月さん」と私の名前を言って、白い衣でひらひらと駆け出した。
「あの、ユイファっていう名前は・・・・・・」

 私はモゴモゴと言葉を呑み込んだ。少女と同じ質問をしようとしたのに聞きそびれてしまった。
 足元でクスクスと可笑しそうな声がする。
 むむ。
 私は影法師を軽く睨みつけて、ユイファの後を追いかけた。
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