チャンドラの杯
「でも、治るんでしょう」
「治らないよ」
ソーマが僕の顔をまじまじと見つめた。
「絶対に治らない病気なんだよ。知らないの? 世界を滅ぼした恐ろしい病気だって聞いたもの、だから」
だから。
「だからそのうち死ぬんだ」
ソーマは何のことかわからないという様子で首を傾げた。シドが、険しい顔で何事かを考え込んでいる。
「でも船が来れば・・・・・・」
ココが太陽の傾き始めた海の彼方に視線を送った。
僕も水平線を見る。相変わらず何も無い、静かな白波が続く海。
「船が来れば助かるんだ」
「船?」
「そう。この海の向こうから来るんだよ」
僕は言葉に力を込めた。
「蓬莱島っていう島から来るんだ。蓬莱島には、どんな病気も治す薬があるんだよ。だから誰も死なないんだ」
そう、船は来る。
「船が薬を持ってきてくれれば、僕やココや、町のみんなの病気も治るんだ。ロエンもこんなふうにならずにすむんだよ」
間に合って欲しい。
「こんな・・・・・・醜い姿にならずにすむんだ」
僕は両手を握り締めて水平線を睨む。諦めたようなロエンの眼差しを思い出していた。
美しいロエンの姿が、病気のせいで僕やココのように崩れてゆくのは嫌だ。
絶対に嫌だった。
「治らないよ」
ソーマが僕の顔をまじまじと見つめた。
「絶対に治らない病気なんだよ。知らないの? 世界を滅ぼした恐ろしい病気だって聞いたもの、だから」
だから。
「だからそのうち死ぬんだ」
ソーマは何のことかわからないという様子で首を傾げた。シドが、険しい顔で何事かを考え込んでいる。
「でも船が来れば・・・・・・」
ココが太陽の傾き始めた海の彼方に視線を送った。
僕も水平線を見る。相変わらず何も無い、静かな白波が続く海。
「船が来れば助かるんだ」
「船?」
「そう。この海の向こうから来るんだよ」
僕は言葉に力を込めた。
「蓬莱島っていう島から来るんだ。蓬莱島には、どんな病気も治す薬があるんだよ。だから誰も死なないんだ」
そう、船は来る。
「船が薬を持ってきてくれれば、僕やココや、町のみんなの病気も治るんだ。ロエンもこんなふうにならずにすむんだよ」
間に合って欲しい。
「こんな・・・・・・醜い姿にならずにすむんだ」
僕は両手を握り締めて水平線を睨む。諦めたようなロエンの眼差しを思い出していた。
美しいロエンの姿が、病気のせいで僕やココのように崩れてゆくのは嫌だ。
絶対に嫌だった。