チャンドラの杯
 シドがとても興味深そうに絵を見ているので、僕は「みんなマザーが描いた絵だよ」と教えてあげた。

 プレートの日付は廊下を奧に進むほど新しく──つまり最近のものになる。残念なことに、それに伴ってマザーの絵の腕前は落ちていったようだけれど。
 昔の絵は大層上手くて風景をそっくり切り抜いたのではないかと錯覚してしまうのに、最近の絵は色も付いていない鉛筆のデッサンだった。

「昔みたいな上手い絵を描くためには、必要なものがあるんだって」
 僕はシドに、マザーから聞いた話をする。
「昔は簡単に手に入ったそうなんだけど・・・・・・ええと・・・・・・」
 何という名前のものだったかな。忘れてしまった。マザーは何て言ってたかしら。

 絵を見ながら歩くシドに合わせて、僕は長い長い廊下をゆっくりと案内してあげる。
 ちょうど最後の一枚──マザーが僕らを描いてくれた絵のところまで来て僕は足を止めた。

 廊下にロエンが立っていた。
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