チャンドラの杯
「この絵の、これはロエン?」
 シドは僕らが描かれたデッサンを指さして言った。
 うん、そうだよ、とロエンが首を振る。
「ココもいるよ。そしてこれが僕」と僕も絵を指さした。

 よく覚えている。あの日、気持ち良く晴れた空の下に椅子を並べてマザーは僕らを描いてくれた。その中には、病気が進行して今は死んでしまった人も大勢いる。

「・・・・・・今とは違うね」
「この時は、僕もまだ今みたいに病気が進んでなかったから」
 僕は寂しい気持ちで絵の中の綺麗な僕を見つめた。
「だからココと僕も・・・・・・ほら、ロエンやシドたちと同じでしょう」

 すると。

 シドが僕を眺める目つきが変わった。とても恐ろしいものを見たような、そんな目。

 それから、シドはその視線をゆっくりと僕からロエンに移した。
 唇が小さく震えている。
「ロエン、きみは、」
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