チャンドラの杯
 揺籃室の中は仄暗い。静かで、ちょっぴりヒンヤリしていて、僕はいつもこの部屋に来ると落ち着く。懐かしい感じがする。

 部屋の真ん中に置かれた机の前で、マザーは椅子に腰掛けていた。マザー、と僕が呼ぶと顔を上げて、部屋に入ってきた僕とシドに微笑んでくれる。
「シドだよ」
 僕は彼を紹介した。
「旅をしているの。マザーとお話ししたいんだって」
 そう言ってシドを振り返って、僕は首を傾げた。

 シドは裾の長い風避けの上着を着ている。
 その上着の下から見たことのない金属の筒を取り出して、彼は筒の先をマザーに向けた。

 黒光りする筒はどこかガンナイフに似ている。
「それ、なあに? シド」

 パン、と乾いた音がした。
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