チャンドラの杯
白いひらひらは線路から少し離れた廃墟の群に向かって行く。
藍色の闇に沈んだ建物から、ちらりほらりと橙色の明かりが見えた。
人が住んでいる。
そう思うだけで、私の胸は躍った。ユイファを追いかける足が速くなる。心なしか手にしたトランクが軽い。
『おやおや? 叶月、これは・・・・・・』
突然嫌な感じに襲われて、私は足を止めた。
空気が冷たい感じ。
なのに肌が焼けつく感じ。
先を行くユイファが立ち止まっている。
「村が・・・・・・」
心臓が冷えてゆくのを覚えながら、私はすぐにユイファを追い越して村に飛び込んだ。
ヤッカだ! ヤッカだ! 幾つもの悲鳴が月の下で谺している。
すぐ近くの廃墟から、子供を抱えた女性が転がり出てくる。ユイファと同じ白い貫頭衣、その後ろから。
のそりと、そいつは姿を見せた。
「──っヤッカ」
月の光で二つの赤い目を不気味に輝かせながら、ヤッカは悲鳴を上げている女性に襲いかかる。
鋭い爪が白い衣を切り裂く前に、私が突き出した刀がそれを受け止めた。
藍色の闇に沈んだ建物から、ちらりほらりと橙色の明かりが見えた。
人が住んでいる。
そう思うだけで、私の胸は躍った。ユイファを追いかける足が速くなる。心なしか手にしたトランクが軽い。
『おやおや? 叶月、これは・・・・・・』
突然嫌な感じに襲われて、私は足を止めた。
空気が冷たい感じ。
なのに肌が焼けつく感じ。
先を行くユイファが立ち止まっている。
「村が・・・・・・」
心臓が冷えてゆくのを覚えながら、私はすぐにユイファを追い越して村に飛び込んだ。
ヤッカだ! ヤッカだ! 幾つもの悲鳴が月の下で谺している。
すぐ近くの廃墟から、子供を抱えた女性が転がり出てくる。ユイファと同じ白い貫頭衣、その後ろから。
のそりと、そいつは姿を見せた。
「──っヤッカ」
月の光で二つの赤い目を不気味に輝かせながら、ヤッカは悲鳴を上げている女性に襲いかかる。
鋭い爪が白い衣を切り裂く前に、私が突き出した刀がそれを受け止めた。