チャンドラの杯
「あんただよね、シオンたちに魔法や妖精を教えたのは」
「そうよ」
「素敵だね」
「ありがとう」
「とても素敵な教えだ。でも、なぜ彼らから奪ったのか教えてもらえるかな」
「奪った? 何のこと?」
「ある概念を、だよ。彼らには、ある概念が欠落している」
 シドは、マザーの隣に立っている僕に視線を移した。

「年齢だ」

 例の、怖いものを見るかのような目だった。

「彼らには年齢という概念がない。シオンやココやロエンの振る舞いはまるで小さな子供だ。俺や彼女のことも・・・・・・シオンたちは男か女か、この点でしか区別できていない。この町を訪れた俺たちをもしも年齢で区別できていたなら、彼らはすぐ奇妙なことに気づいたハズだ」
 奇妙なこと? 奇妙なことって何だろう。
「だけど彼らは、その明かな異常に気づかなかった」
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