チャンドラの杯
 シドは大きく息を吐いた。

「恐ろしい町だよ。誰がどうやったのか知らないが彼らを『治療』した、そこまではいいさ。でも、マザー。なぜ彼らをこんな風にしたんだ?」
 僕はシドの言葉を頭の中で繰り返した。治療した・・・・・・?
「ねえ、治療したって何のこと!」
「病気を治したってことだよ。世界を滅ぼした恐ろしい病気を」
「嘘だ! 病気は治ってないよ! 僕たちは病気なんだもの! だから死ぬんだもの」

 シドは憐れみを込めた目で僕を見た。
「そうだ、みんな嘘だよ。ねえマザー、どうして彼らにこんな嘘を教えたんだ? なぜ、狂気の町を作った?」
 シドの瞳に炎が燃えていた。怒りの炎だった。

「あんたは何者だ?」
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