チャンドラの杯
鈍色の空で雷鳴が低く呻っている。強風が濃密な潮の香りを運んでくる。
僕とシドが屋上に出ると、大きな雨粒が頬を叩いた。さっきまでの晴天はどこかへ行ってしまったようだ。
建物の上はちょっとした高台のようになっていて、町を一望できる。その海に突き出した一番端に立って、ロエンは荒れ狂う白群の海を眺めていた。
羽織った風避けが、ばたばたと音を立てて騒いでいる。
「ロエン!」
僕は海鳴りと雷鳴に負けないように声を張り上げた。ロエンが、ゆっくりとこちらに顔を動かした。
「やあ。シオン、シド」
「危ないよ! そんなとこにいたら! マザーも駄目だって言ってたよ!」
うん、と頷いてロエンは僕らのほうへ歩いてくる。
「マザーとの話は済んだの?」
「まあね」とシドはロエンを真っ直ぐ見つめて言った。
「それでロエン、きみにも話がある」
うん、とロエンは頷いた。いいよ、それなら二人で話そうよ。
僕は不安になる。マザーと会った時のシドを思い出して、二人の「話」を止めたくなった。けれどシドが「シオンは砂浜を見てきてくれないかな。ココとソーマが心配だ」と言ったので、仕方なく屋上を後にした。
僕とシドが屋上に出ると、大きな雨粒が頬を叩いた。さっきまでの晴天はどこかへ行ってしまったようだ。
建物の上はちょっとした高台のようになっていて、町を一望できる。その海に突き出した一番端に立って、ロエンは荒れ狂う白群の海を眺めていた。
羽織った風避けが、ばたばたと音を立てて騒いでいる。
「ロエン!」
僕は海鳴りと雷鳴に負けないように声を張り上げた。ロエンが、ゆっくりとこちらに顔を動かした。
「やあ。シオン、シド」
「危ないよ! そんなとこにいたら! マザーも駄目だって言ってたよ!」
うん、と頷いてロエンは僕らのほうへ歩いてくる。
「マザーとの話は済んだの?」
「まあね」とシドはロエンを真っ直ぐ見つめて言った。
「それでロエン、きみにも話がある」
うん、とロエンは頷いた。いいよ、それなら二人で話そうよ。
僕は不安になる。マザーと会った時のシドを思い出して、二人の「話」を止めたくなった。けれどシドが「シオンは砂浜を見てきてくれないかな。ココとソーマが心配だ」と言ったので、仕方なく屋上を後にした。