チャンドラの杯
「廊下に飾られた絵と──それから写真」
シドが拳銃を握った腕を降ろした。
「『カメラ』が壊れたんだな。途中からは手描きのデッサンになっていた」
そうだ、『カメラ』だ。僕は思い出した。上手な絵を描くためにマザーが必要だと言っていたもの。これは写真というのよシオン。カメラが無いと写真は撮れないの──。
「全てにお前がいる」とシドが言った。
ロエンは押し黙っている。シドは続けた。
「四十年前のデッサンにも、百年前の写真にも。服装や髪型は違っても、今と同じ顔、全く変わらない姿でだよ」
シドはロエンが構えているガンナイフに視線を移す。
「避けるのはともかく──いくらヤッカでも、飛んでくる弾丸をガンナイフの刃で弾くなんて真似ができる者はそうそういないぞ。とんでもない使い手だ」
シドは植物に覆われた屋上に視線を巡らせた。
「教えてくれないかな。お前は何者で、いつからここにいるのか。マザーのことは知っているのか。そもそもこの建物は──」
「二百五十年前の、星間移動船タリスエバーニア」
ロエンが言った。はっきりした声だった。そして、それは僕が知っている優しい声ではなくて、ぞっとするような冷たく暗い声だった。
シドが拳銃を握った腕を降ろした。
「『カメラ』が壊れたんだな。途中からは手描きのデッサンになっていた」
そうだ、『カメラ』だ。僕は思い出した。上手な絵を描くためにマザーが必要だと言っていたもの。これは写真というのよシオン。カメラが無いと写真は撮れないの──。
「全てにお前がいる」とシドが言った。
ロエンは押し黙っている。シドは続けた。
「四十年前のデッサンにも、百年前の写真にも。服装や髪型は違っても、今と同じ顔、全く変わらない姿でだよ」
シドはロエンが構えているガンナイフに視線を移す。
「避けるのはともかく──いくらヤッカでも、飛んでくる弾丸をガンナイフの刃で弾くなんて真似ができる者はそうそういないぞ。とんでもない使い手だ」
シドは植物に覆われた屋上に視線を巡らせた。
「教えてくれないかな。お前は何者で、いつからここにいるのか。マザーのことは知っているのか。そもそもこの建物は──」
「二百五十年前の、星間移動船タリスエバーニア」
ロエンが言った。はっきりした声だった。そして、それは僕が知っている優しい声ではなくて、ぞっとするような冷たく暗い声だった。