チャンドラの杯
「何考えてたの、シド」
「夢のこと」
「夢、見たの?」

 ひび割れたアスファルトが、荒野の中を地平の果てまで続いていた。車を走らせる者が私たち以外にいなくなってしまっても、道はちゃんと伸びている。

 何かの植物の根が作ったひび割れの上を通過して、車が弾んだ。

「ずうっと昔に見た夢だけどね。思い出してた」
「ふうん。どんな夢?」
「世界の終わりの夢だよ」

 私の夢は現実になった。

 人の夢。人類が遙か太古から見続けてきた夢が、現実になった後に。

 もっとも、それよりもずっと以前に、既に私の世界は終わってしまっていたのだけれども。

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