チャンドラの杯
絶望だ。孤独だった。世界中から置き去りにされた気分だった。全ての視覚、味覚、聴覚が現実の認識を拒否し、私の世界はガラガラと音を立てて崩れ落ちていった。
思えばロビーを見たのは(テレビやメディアを通じてはその後も何度となく見かけたが、実際に自分の目で見たのは)あのパーティー会場の姿が最後。
ヒナとは──人類の世界が終わる前にもう一度だけ会った。
「危ない!」
突然ソーマが助手席で上げた悲鳴が、私の意識を過去から現在に引き戻した。
あっ、と思ってブレーキを踏んだときには遅すぎた。
鈍い音と共に衝撃が走る。それはボンネットで一度跳ねてフロントガラスにぶつかり、そのまま滑るように視界の横へ消えた。
車が止まる。防弾仕様のためフロントガラスは無傷だが、赤い汚れがべっとりと付着している。
「きゃー」とソーマが叫んだ。
人を撥ねた! 私は大急ぎで車から飛び出した。
思えばロビーを見たのは(テレビやメディアを通じてはその後も何度となく見かけたが、実際に自分の目で見たのは)あのパーティー会場の姿が最後。
ヒナとは──人類の世界が終わる前にもう一度だけ会った。
「危ない!」
突然ソーマが助手席で上げた悲鳴が、私の意識を過去から現在に引き戻した。
あっ、と思ってブレーキを踏んだときには遅すぎた。
鈍い音と共に衝撃が走る。それはボンネットで一度跳ねてフロントガラスにぶつかり、そのまま滑るように視界の横へ消えた。
車が止まる。防弾仕様のためフロントガラスは無傷だが、赤い汚れがべっとりと付着している。
「きゃー」とソーマが叫んだ。
人を撥ねた! 私は大急ぎで車から飛び出した。