チャンドラの杯
「キョウゲツ?」

 どこかで聞いた名だ。

「はい、叶月。願いが叶うお月様、という意味です」

 どこだ? どこで聞いた? ・・・・・・駄目だ、思い出せない。

「あなたのお名前は?」
 ふと、そう尋ねる彼女の腰に一本の刀があるのが目に留まった。値打ちのありそうな細工の鞘に納まっている。
「俺の名前は・・・・・・」

 私が名乗ろうとした時、異変が起きた。

「何をするんです!」
 突然、目の前の女性が叫び出した。
「駄目です! 駄目ですったら」
「あの、叶月さん? どうしました?」
「この人は敵じゃない・・・・・・」
 女性は俯き、自分の足元を見てそう呟いている。そう、まるで自分の影法師に話しかけるように──。

「やめて下さい、キョウゲツ!」

 一声そう叫んで、それから彼女は再び顔を上げた。
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