チャンドラの杯
 私は私のフルネームを口にした女をまじまじと見つめた。それから、手にしたバレルの狙いを女の眉間に定めた。
 心が冷えてゆくのがわかる。

 ボタンを押す。

 放たれた閃光を、女は驚くべき動きで刀に当てて弾いた。
「──?」
「原始的に思えるが、我々ヤッカにとって刀という武器はなかなか便利でねえ。通常の弾丸を見極めて弾くことも、今みたいにレーザーを反射させることだってできる。電子砲や陽子砲みたいなビーム兵器には弱いけれどね。もっとも見たところ、君の持ち物にそんな大きな装備は見当たらないよねえ」

 レーザーを刀身で反射させた・・・・・・?

「有り得ないぞ」
 私は背筋に冷たいものを感じた。
「弾丸は見ることができても、レーザー光を目で捉えて対処するなんて──」
「──特殊相対性理論に反するね。でもねえ、バレルの向きと君の指の動きなら見えるんだよ」

 それこそ有り得ない話だった。
 いくらヤッカでもバレルの向きや指の動きから、レーザーがどこに当たるかを正確に見定めて刀身を持ってくるなど──少なくとも素人には絶対に無理だ。
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