チャンドラの杯
「先の報告の通りである。事実確認と詳しい船内状況報告のため、殺害された遺体を映した全艦内の映像を添付する。なお、これら全ての遺体については、帰還の途中にこちらで宇宙葬を行う」

 送信を終え、私は息を吐いた。すぐ隣では、頭に焼け焦げた穴を作って操縦士たちが絶命している。

 これでいい。

 メディアはこの事件を大きく報道し、地球に帰り着く頃には学者や警察が立派な殺害動機まで作り上げて私を待っているだろう。

 これで彼女を守れる。これで、ヒナとの約束を守れる。

 ──私の娘よ、守ってあげて。

 守るとも。君のためなら。どんなことをしても私はソーマを守り抜こう。

 そうだ。

 私は思い出した。
 ソーマが心配だ。通信のために、随分長い時間一人きりにしてしまった。

 私は操縦室を後にし、ソーマを残してきた居住区へと急いだ。




 >>>>【続く】
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