21世紀人のカルテ
だが、そんな日々も今日で終わりだ。



こう書くと、まるで今日から良い方向に人生が転換するみたいに聞こえるけど、現実は逆だ。



今日、いきなり解雇された。



今、流行りの派遣切りってやつだ。



紙切れ一枚で俺は捨てられた。



まるでコント。



頭上から金ダライ。


何の前触れもなくガツンと降ってきて、それを誰かが笑い、チャンチャンと終幕。


だが、あいにく人生ってのは簡単に幕は引けず、
俺は身体だけは健康で、自ら死のうとしなければまだまだ生きていられてしまいそうなのだ。



だが、もう生きていきたくない。


だけど、死ぬのは怖い。


自分から死ぬなんてできない。



そこまで考えて、体が動いた。



ゴミに溢れた部屋をガチャガチャとあさり、
何日か前の薬味がこびりついたカップ麺の空と
吸殻のたまったビニール袋の間に「それ」を見つけた。



ナイフだ。
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