心 ―ハジマリノウタ―
「それと、俺たちの斜め前!
あそこに座ってる奴らは、
もう知ってるよな」
言われた方向に目を向けると、
そこにいたのは、
私を連れ出した主と、
主を押し倒した少女だった。
「あの長い黒髪の奴が、リオン。
その隣に居るのは、メイニー。
それぞれ、リオ、メイって呼ばれてる」
彼らを眺める。
リオは長めの黒髪を後ろで結んで、
黒い瞳は、メイに向けられ
優しげに光っていた。
メイはそのリオの腕に抱きついていた。
その姿はまるで、
恋人、兄弟、そんな類の雰囲気。
その顔は幸せそうで、
私には良く分からなかった。
そんな感情は無いから。
心など、必要ないから。
あったとしても、
そんな風に感じあえる人などいない。
すると、横からレイが声を低くして囁いた。
「メイには気をつけた方がいい。
悪い奴じゃないけど、リオが大好きでさ。
ユアの看病をしている間、
メイはリオに放っておかれた。
だから、ユアのこと、
あんまり良く思ってないんじゃないかな」