心 ―ハジマリノウタ―
人々が解散した後、
私に嫌でも集まる視線を気にしながら
レイは言った。
「ったく、じいさんも
あんな言い方しなくてもいいのにな。
まるで、ユアのせいみたいになってるじゃないか。
早いとこ、部屋に戻った方がいいかもしれないな」
老人が口にした私の名。
その理由は、クリスタルの反応にあった。
私があの原石に触れた時、
クリスタルの反応は、異常なほど強力だったらしい。
その報告を読んだ会議の代表者たちは、
私の能力に何か鍵があるのではないか、
とそう思ったらしく、
危険を避けるために撤退を決定したらしい。
私の命など、大した価値もないというのに。
私はレイに頷くと、
頭を下げて、部屋に向かった。
階段をあがっていると、
あまり上を見ずに歩いていたせいか、
誰かとぶつかってしまった。
「申し訳ありません」
と顔を上げると、
そこに居たのはリオだった。
黒髪を後ろに結んで、
一際漆黒の瞳が目立っている。