心 ―ハジマリノウタ―
私は黙ってリヴィアが運ばれて行った扉を眺めていた。
ジグが私を揺さぶって、視界が上下左右に動く。
「ユア、聞こえるか?
怪我をしているのか?」
最後に私の目に映ったのは、
力なく垂れる、リヴィアの白い手だった。
心感じるままに、歌っても
私にはリヴィアを助けられなかった。
私の目に、枯れたはずの涙が浮かぶ。
それは頬に落ち、
それから伝って顎からアスファルトへ。
まだ涙の止め方を知らない私は、
再び涙を流した。
私の異変に気が付いたのは、
リオとレイだった。
「ユアが、泣いてる?」
「それって…ユアに心が戻ってきた?!」
叫びあう2人の少年達。
私の異変に気がつき、ささやきあう人々。
「ユア、心が戻ってきたのかね?
リヴィアは…?」
私は、黙っていた。
黙ってただ、その血の痕を見ていた。