心 ―ハジマリノウタ―



リオは何の反応も示さなかった。


メイはそんなリオを見て、

泣いて部屋を出て行ってしまった。


レイは、顔をしかめた。


しかし、そんな風景は今の私の瞳には映らなかった。


瞳に映っているのは、

最後に見たリヴィアの力の無い白い手。


私は、無力で、何も出来なかった。


それだけは、何も変わらない。


けれど前とは違う、私の帰ってきたはずの心に

吹き付ける寒くて、不安な風。


私は目を瞑った。


今は、何も見たくない、

感じたくない……。



「リオ、早くメイを追え。

大変なことになるぞ」



「別にいいんだ。

いつまでも俺といるわけにはいかない。

そのうち泣き止んで、俺から離れる」



そういったリオは少し寂しそうでもあった。


二人は、ロックを呼びに、

部屋を後にした。




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