心 ―ハジマリノウタ―
「リヴィアなら、
多分屋上に居ると思うよ。
さっき、ロックが迎えに着たからね」
通りかかった治療班の男が教えてくれた。
頭を下げて、お礼を言うと、
逆にお礼を言われた。
「いやいや、お礼を言うのはこっちの方さ。
手が回らなかった時は、助けてもらったし、
戦闘で負傷した人達の怪我も軽くなって
本当に大助かりなんだ。
ありがとう!」
能力が覚醒して以来、こんな風に
お礼を言われることも少なくなかったが、
毎回首を振るだけで、何も言うことができない。
いうべき言葉が分からないのだ。
治療班の男と別れると、
私は迷った。
ここは、屋上へ行ってもいいのだろうか。
ただ単にお見舞いならば、
ロックが屋上へ連れ出すことは無いだろうし、
恐らく大切な話をしているのだろう。
そこに入っていってもいいのだろうか。
分からなかった。
関係ない必要ない、で、済まさなくなった分
私には分からないことや迷いが増えた。
迷った挙句、行くところもないので
屋上へ向かうことにした。