心 ―ハジマリノウタ―
重い扉が軋んで開くと、
手すりにもたれて、
こちらを背に話す2人の姿が見えた。
その表情からして、やはり大切なことのようだ。
私が声を掛けるか躊躇っていると、
ロックが私に気がついて
後ろを振り返った。
「ああ、ユア!
ちょうど良かった、
今リヴィアと君の話をしていたんだよ」
私の話…?
一体何の話だろうか。
手招きするロックとリヴィアに近付くと、
リヴィアの表情が強張っているのが分かった。
具合でも悪いのだろうか?
それとも、傷口が開いてしまったとか…。
急くような感情がわきあがってきて、
私は思わず尋ねた。
「リヴィアさん、具合が悪いのですか?
それとも、傷が痛むのですか?
それなら、早く部屋へ戻ったほうが…」
恐らくこの気持ちを、心配というのだろう。
心を取り戻してから、
急速に感情を認知していく毎日に戸惑うが、
それを煩わしいと感じないから不思議だった。
「え?いや、大丈夫。
心配してくれてありがとう」
しかし、微笑んだリヴィアの表情は
やはり強張っているように見えた。