心 ―ハジマリノウタ―




重い扉が軋んで開くと、

手すりにもたれて、

こちらを背に話す2人の姿が見えた。


その表情からして、やはり大切なことのようだ。


私が声を掛けるか躊躇っていると、

ロックが私に気がついて

後ろを振り返った。




「ああ、ユア!

ちょうど良かった、

今リヴィアと君の話をしていたんだよ」




私の話…?


一体何の話だろうか。


手招きするロックとリヴィアに近付くと、

リヴィアの表情が強張っているのが分かった。


具合でも悪いのだろうか?


それとも、傷口が開いてしまったとか…。


急くような感情がわきあがってきて、

私は思わず尋ねた。




「リヴィアさん、具合が悪いのですか?

それとも、傷が痛むのですか?

それなら、早く部屋へ戻ったほうが…」



恐らくこの気持ちを、心配というのだろう。


心を取り戻してから、

急速に感情を認知していく毎日に戸惑うが、

それを煩わしいと感じないから不思議だった。




「え?いや、大丈夫。

心配してくれてありがとう」




しかし、微笑んだリヴィアの表情は

やはり強張っているように見えた。



< 171 / 534 >

この作品をシェア

pagetop