心 ―ハジマリノウタ―
治療室は、暗い廊下の奥にあった。
リヴィアが傷を負っていた当時、
毎日のように通ったその廊下を
今は沈んだ思いで進む。
ロックが消えた。
その事実は、私を悲しませるというよりは、
信じられなかった。
あの、人が良くて、能力者の信頼を一手に受けるロックが、
私の髪を嬉しそうに整えてくれたロックが、
消えた…?
信じられなかった。
ただ、私は信じたくなかった。
深いため息と共に、
治療室の扉を開ける。
と、ツンと消毒液の匂いが鼻をつく。
そして、もう一つの異臭…
鉄の匂い、
血の匂いだった。
私は、目を疑った。
治療室は、私の想像もつかないほど
酷い有様だった。