心 ―ハジマリノウタ―
「ユア!?
目を覚ましたのか!」
ジグが気がついて、
私の元へ早足で歩み寄ってきた。
その老いた顔には、
未だかつて見たことが無いような、
感情が表れていた。
狼狽、不安、後悔、
そして疲れ…。
「すまなかった。
あんな状態になっているとは、
知らなかったのだ…」
あんな状態。
血の匂い。
骨が折れる音。
吹き出す血飛沫に
あの、痛みに狂う目…。
私は思わず自分の身体に腕を巻きつける。
恐ろしかった。
これが恐ろしいという感情なのだ。
身体が、動かない。
それなのに、震える。
嗚呼、恐怖とは、
こんなにも恐ろしい物なのか…。
「ユア…。
じいさん、あれは一体どういうこと何だ?」