心 ―ハジマリノウタ―
人々は奴隷工場に向かって
歩き出す。
鼓舞したジグの言葉を微塵も疑わずに。
工場の門は、何時でも来客を迎えられるよう、
開いていた。
それが例え、歓迎される者だろうが、
敵であろうが、
入るのは簡単だ。
だが、出てくるのは難しい。
私はその最後尾にいる、
治療班の更に一番後ろにいた。
人波に埋もれて、
先頭は見えない。
しかし、皆の足取りは速く、
とまることは無い。
恐らく今頃、
ジグが大門をくぐった所だろう。
一人また一人と己の意思で、
その門をくぐっていくのだ。
そして、私の番もやってくる。
私が、この門をくぐるのは初めてだった。
何故なら、此処からでたことなど
なかったのだから。
リオが私を連れ出してくれた。
そして、そのリオを助けるために、
再び工場に入ろうとしているのだった。
そこにはまだ、働く心亡き者がいるのだろうか?
ドレイはまだ私の知る姿だろうか?
私の知っている奴隷は
まだ存在しているのだろうか?
やがて私の番がやってきた。
私もまた、その門を自分の意思でくぐった。