心 ―ハジマリノウタ―



工場の中は何も変わっていなかった。


私がいた頃と同じ、

虚しさだけが響く場所。


生きているものは近寄ることを拒む。


私たちは今、それを壊そうとしている。


列は進み、1階のエントランス・ホールに

能力者たちは飲み込まれていく。


ついに、私が足を踏み入れ、

計ったように後ろで巨大な扉が閉じた。


目の前に、大きな階段がある。


見上げれば、その階段は上へ上へと

折り重なるようにして続いている。


あれが、中央階段だ。


そこから上に行けば、

工場が現れる。


能力者が踏み出す前に、

独りのドレイが姿を現した。


私の知っているドレイではない。


私たちの敵の、ドレイだ。


身体から突き出した無数の刃が

怪しい光を浴びて光った。



鋭い銃声が響くと共に、

ドレイが灰と化す。


リヴィアの銃だろうか?


しかし、次の瞬間、

大勢のドレイがまるで転がるように

階段から押し寄せてきた。


どの奴隷も銃口、槍の先、ナイフなどが

突き出し、嫌な液を滴らせている。


今の私には、そのドレイに恐ろしさを

哀れを感じることが出来る。


銃声がホールに響き、

刃がぶつかり合う金属音や叫び声が

戦闘の開始を、示していた。




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