心 ―ハジマリノウタ―




「フェイクでいいよ。

俺は君を奴隷にするために

連れてきたんじゃないんだ」




私は頷いた。


何も言えない。


要らないと、決めた。


捨てると決めた。


それなのに、私の中に溢れる映像。


列車の中で、レイは私に

呼び捨てにしてよ、と言った。


クリスタルは、夢の中で、

もう奴隷で要る必要は無いと、力をくれた。


もう戻れない。


もうあの場所には戻れない。


だからこそ、私は心を捨てるのだ。


でも、今は…。


今だけは、悲しみを感じていたい。


彼らを忘れる前に、少しだけ…。


私は口を開いた。




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