心 ―ハジマリノウタ―
私は口を閉じた。
旋律は余韻を残し途切れ、
フェイクは閉じていた瞳を開いた。
ああ、もう私の歌は、誰かを救えないのだ。
ドレイにも利かない、癒しもできない。
しかし、そもそもそれを使う場所も無い。
それをも、私は捨てたのだ。
自らの意思で。
人のために行動しようと決めた。
大切な者を守ろうと決めた。
私は、貫けていただろうか。
涙が頬を伝い、
私はそれを拭うこともしなかった。
ただ…苦しかった。
歌は私を癒してはくれない。
その雫をフェイクが指で優しくすくった。
もう片方の手で私の髪をなでる。
「ユア…ありがとう。どうか、泣かないで。
これからは俺が傍にいるから。」
フェイクは何故私を選んだのだろう。
アジトの場所も、結界者のことも、
私は何も知らない。
捕まえても何の利益もない。
人質?
しかし、私を人質にしたところで、どうにもなるまい。
分からなかった。
けれど、そんなことは、関係なかった。
止まらない思いで、涙が溢れるから。
苦しい。
この思いは、悲しみ?
ならば、これが最後でいい。
私は彼の胸で泣いた。