心 ―ハジマリノウタ―
それから、どれ位の時間が過ぎただろうか。
此処に来てからフェイクは、
ずっと部屋を出ず私の側にいた。
私の歌に耳を傾けたり、
部屋の壁に隙間無く並べられた本を読んだり。
しかし、何をするにも、
彼は私を側においておきたがった。
それ故に、私は他のハートを持つ者に会うことも、
ドレイを見かけることも無かった。
今日も、何時ものように、
フェイクは私をソファに座らせ、
その隣に自分も腰を下ろした。
「ユア、俺は、君が着てから、
この館の誰にも会わせないようにしてきた」
フェイクは、このハートを持つ者の住む場所を
ドレイ工場の地下を館と呼んだ。
私は、ドレイ工場をそんな風に
呼ぶことができるのか、と思ったが、
彼らにとっては此処が家なのだ。
「でも、何時までもそうしては要られない。
ユアがもし、此処に居ることを望むなら、
俺たちのリーダーに
会ってもらわないといけない」
それから、私の目を覗き込んで、
そっと手に触れた。
深紅の瞳は、じっと私を見つめる。
その瞳に、私は自分の姿が映るのを見た。