心 ―ハジマリノウタ―




「ユア、もし君が、戻ることを望むなら

俺が返してあげよう。

でも、もし残ることを望むなら…」




フェイクはそっと視線を落として、

私の手を見つめた。


まるで直視することが辛い出来事に

向き合うかのように。


私の中で、答えはとうに決まっている。




「フェイク、顔を上げてください。

私は自分の意志で此処へきました。

確かに、選択を迫ったのはアナタでした。

けれど、選択したのは私です。

此処に残ること、

それが私の望みです」




私が帰ったところで、

歓迎されることは無いだろう。


疑われていた私が、姿を消した。


幾らリヴィアたちが訴えても、

恐らく私はあそこでの居場所を失っている。


それどころかもし、あのまま私が居座れば、

疑いがリヴィア達にも向いたかもしれない。


そう考えると、私が離れていることが、

一番大切な者を守る事ができる手段なのだ。


近くにいては、守ることができない。


ならば、離れる事を望む。




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