心 ―ハジマリノウタ―
食事が終わった後、
私は再びフェイクに手を引かれて
部屋へと戻った。
誰に呼び止められることも無かった。
しかし、ファイラの嫉妬の視線と、
あの女性の、謎の視線は、
私が暗闇に紛れてしまうまで
ずっと追い続けてきた。
私は廊下を歩く間、
何も考えないようにした。
そうでないと、
知らなくていいことまで思考し、
関係の無いことまで、
推測してしまいそうだったから。
ジグの裏切り。
リヴィアの仮定は正しかった。
悲しくもない、悔しくもない。
ジグは、私にまたしても
居場所を与えてくれたのだ。
裏切り者に身を落としても、
私は構わない。
ただ、彼らの無事を見守れる、と言う点では、
絶好の位置にあり、
戦うこともあるかも知れない、と言う点では、
避けられない位置に在る。
私は静かに首を振った。
何も考えまい。
もう、私には、
何も関係のないことなのだから。
言葉も交わさず私たち2人は、
静かな闇の先へと歩いた。