心 ―ハジマリノウタ―
第八章
Lost It
≪RAINARDE≫
ドンドンドンと荒っぽく叩かれる扉の音に、
俺は、まだ眠っていたい気持ちから、
寝返りをうった。
何故だろう、
すごく、疲れている。
もっと寝たい…。
でも、どうしてだろう。
この疲労は、戦闘の…
その瞬間、俺の脳味噌は一気に冴え渡った。
ガバッと起き上がると、
慌てて扉を開ける。
そこには、汚れた姿のままの
リヴィアとリブがいた。
2人の表情は、絶望的だった。
リヴィアは眉間にシワを寄せ、
遠めに見れば、
何か考え事をしているように見えたが、
その緑色の双眸は何も映して居らず、
虚ろだ。
リブも同じく眉根を寄せているが、
それは傍目から見ても明らかなくらい、
涙をこらえていた。
目の縁が赤い。
どうやら、此処に来る前にも泣いていたようだ。
「それじゃあ…」
俺はかすれる声で、やっと言葉を口にした。
けれど、実感が湧くのが恐ろしくて、
それが本当だと、認めたくなくて、
核心を口にできない。
苦しげに言葉にしたのは、
やはりリヴィアだった。
「ユアは、行っちまったよ」
彼女は強い。
一人で生きて、独りで戦う。
そのことで有名な彼女の、
唯一の弟子。
それを失ったのに、
何故彼女はこんなにも強く在れるのだろう?
疑問と共に、俺の目から涙が溢れた。