心 ―ハジマリノウタ―
その考えを2人に告げようとした時、
廊下を通りかかった男が、
俺たちに声をかけた。
「おーい、お前たち!
今ジグから集合がかかるぞ」
男が告げた途端、
スピーカーから耳障りな音が流れる。
ほらな、と男は去っていく。
考えれば簡単にわかることなんだ。
何故、工場に攻め入る、というのに
援軍も要請せず、
部隊も分けず、
おそらくは独断で決行したのか。
全て、ジグの策略だった。
これから、ジグはこの状況を
どう説明するのだろう?
ユアを救世主に仕立て上げ、
これまで以上に、ユアのためにも
能力を駆使して奴隷と戦う、
と鼓舞するのだろうか?
それとも、全く不測の事態だ、と
説明するのだろうか?
あるいは議会に申請してから、
ということも…
考え込んでいるうちに、
リヴィアが俺の肩に手をおいた。
「レイ、今考えても仕方ないみたいだ。
さっさとジグの話を聞きに行こう。
さ、涙を拭くんだよ!」
そう言って、俺の肩を強く揺すると、
歩き始めた。
リブも俺を見て頷く。
俺は深く息を吸うと、
彼女たちに続いて、リビングへと歩き出した。