心 ―ハジマリノウタ―



リビングの扉を開けると

一斉に集まっていた能力者たちが

俺たちに視線を注いだ。


集中した視線に、思わず居心地が悪くて

俯きながら部屋に足を踏み入れる。


一体、何なんだよ…?


ソファにはジグが座っていた。


いつもと全く変わらぬ様子で、

静かに目を閉じて、待っている。


何を?


もしかしたら、このアジトを潰すチャンス…

かもしれない。


俺が、許せなかったのは、

ユアが身を挺してまで、俺たちを救って

ハートを持つ者に攫われたというのに、

落ち着いていられるジグや能力者たちの神経だ。


能力者たちは、

事情を知らなかったのかもしれないが、

俺には我慢ならない態度に見えた。




「皆集まったか。

今回の戦闘で起こった…

不可解かつ無情な出来事を公に

皆に報告しておかねば、と思う」



ジグが目を伏せたまま、まるで悲しむかのように、厳かに告げた。


俺は、理解できなかった。


不可解?

無情?


どこからそんな言葉が出てくるんだ?


俺たちが最上階にいるうちに、

どんな出来事が起こったっていうんだよ?


皆、じっとジグの話の続きを待った。



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