心 ―ハジマリノウタ―
残ったのは、ロックと呼ばれた男、
ジグという老人、主様、
主様を押し倒した少女、
初めに見た美しい隻眼の女の人、
知らない顔の少年、そして、私。
この七人だ。
私たちは今まで居た部屋と
反対の位置にある部屋の前に立っていた。
その部屋は扉ではなく、
厚く、蒼く透き通ったガラスで閉じられている。
入れるとは思えないのに、
五人は難なくガラスに吸い込まれていった。
残されたのは、私と主様だ。
「お手をどうぞ?」
主様は笑って手を差し出した。
私は意味も分からず、主の手に自分の手を重ねる。
主が、ガラスに手を当てると、
驚いたことに、ガラスに主の手が溶け込んだ。
私は主が手を引くままに、
ガラスの中へと入った。