心 ―ハジマリノウタ―
第九章
It Was Love
宴から部屋へと戻ったフェイクと私は、
部屋から出る前と同じようにソファに腰を下ろした。
「驚いただろ?
あの人が、俺たちのボスだって」
ジグの事だ。
私は首を横に振った。
驚きも悲しみも、もはや私には存在しない。
たとえ、存在したとしても、
そんな風には、感じなかっただろう。
「そうなの?
まあ、あの人は、何も話さないから。
実際どっちの味方かも怪しいけどね」
フェイクは、私に片目を瞑って見せると、
おかしそうに笑った。
どちらの味方か分からないのに、
何故、信頼できるのだろう?
私達…いや、能力者の一部は、
完全にジグを疑っていたのに。
「何故、どちらの味方かも怪しいと思うのに
笑えるのですか」
「何故って…
それは、ジグが俺たちの味方だって信じてるからさ」
信じる。
その言葉に、私は目を逸らした。
私にはもう、縁のない言葉だった。