心 ―ハジマリノウタ―



額を冷たい窓ガラスにあずける。


もうどれくらい、

あの笑顔を見ていないのだろう?


いや、感傷に浸るのは止めだ。


そんなことをしている暇はない。


考えろ。


考えて、考えて、出た可能性を

全て虱潰しに探すのだ。


額に冷たい窓ガラスが、

途端に脳を覚ます。


もう何度も考えつくした可能性を挙げていく。



まず分かっている事は、

ロックは連れ去られたということ。


他の能力者は返され、

彼だけが攫われた事には、

何か理由があり、意味があるはずだ。


そして、連れ去られた時、

暗闇でわざわざ姿を隠した事。


姿を見られてはいけないという

理由があったということだ。


または、姿を見れば、

誰であるかが一目瞭然であるということ…。


連れ去った人物がジグだった、

というのであれば、姿を隠す事に説明がつくが、


それには、無理があるし、

ジグはずっと中央アジトに居た。


しかし、ロックの任務を知っていた人物は

限られている。


そう、あの時、ロックは言った。




『ついさっきね、議会で決まったんだ』




議会の中にも、敵が居る。


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