心 ―ハジマリノウタ―



ジグがユアを嵌めた。


それは、ジグにとってユアが

不都合な存在だったからだろう。


ユアの能力は、ドレイ側の者にとっては

脅威だ。


しかし、どうしても引っかかるのは、

何故ユアを殺さなかったのか、

ということだ。


ユアの能力が発覚したあの戦闘の日、

ユアはハートを持つ者フェイクが

自分をドレイから助けた、と言った。


つまり、ユアはドレイ側に

命を救われている。


殺そうと思えば、殺せたのだ。


それなのに、ユアは殺されなかった。


しかし、ジグがユアを孤立させるような

発言をしたのは、その少し前で、

あの発言のせいで

疑いがかかったのは間違いない。


つまり、ジグはユアを嵌めたけれど、

殺したいわけではなかった?


それとも、単にフェイクの行動は

イレギュラーだった、ということだろうか。


いや、それだと、工場での

あのフェイクの行動に説明がつかない。


あの戦闘の日のフェイクの行動が、

想定外だったとしても

その後の、工場へ攻めた時の行動は

計画的だったはずだ。


何故なら、あの攻撃は

ジグがロックの誘拐後決めた事なのだから。


それに、ユアに屋上へ行けと叫んだ声は、

間違いなく、ジグの声だった。


始まった戦闘の最中、

はっきりと聞こえた。


ジグはユアを孤立させ、

屋上へ向かわせた。


ドレイが、ユアを追って行ったことの方が、

イレギュラーだった?


元から、

ユアを連れ去るつもりだった、

ということになる?


< 466 / 534 >

この作品をシェア

pagetop